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京都の約束プロジェクト



地球温暖化対策は、とても重要な経済政策です。

5月27日のフィナンシャルタイムズ紙で興味深い記事が掲載されていましたので、ご紹介します。
http://www.ft.com/cms/s/8d96e53e-0d36-11dc-937a-000b5df10621.html

以下、記事の要約です。(緑字)

環境経済学と政策に関わる研究誌である、Journal Review of Environmental Economics and PolicyにおいてEUの排出量取引制度(EU ETS)が、気候変動対策として最も優れた制度であり、今後の地球全体の気候変動政策の中心となるであるとの報告がされた。この報告を行ったのは、マサチューセッツ工科大学のDenny Ellerman教授などの著名な経済学者グループ。

報告の中では、この制度の最も優れた点は、強制的な排出規制が広範な規模にわたって適用され、多数の国と企業が対象となる点にあるとされている。特に、世界全体の温室効果ガス排出量の約20%(EU全体の半分)が対象となる点が評価されている。

この制度では、エネルギー消費量の多い産業は排出規制が課せられ、規制された量以上の排出をする企業は外部から排出する権利(排出権)を購入する必要がある。昨年の春、排出権供給量が多いことが判明し、排出量価格の暴落を招いたが、EUETS制度開始1年目の高い排出権価格は企業の排出量削減に寄与したものと思われ、その削減率は7%に及んだとしている。


日本では、このような排出量取引制度は、産業界および経済産業省からの強い反対もあり、未だに具体的な制度導入の議論が開始されていません。国が排出制限を課せられ、その制限がこれから強化されることが予想されるなか、企業レベルの排出規制がされないという状況となっています。

一方で、EUでは、その適用範囲を、運輸(飛行機、自動車、船舶)に広げる方向で検討が進んでおり、その規模はさらに拡大される予定です。CO2排出量の少ない社会に向けた道筋が、次々と打ち出されています。

日本では、このような制度への反対意見として、エネルギー消費量に制限をかけることで、経済成長が阻害される、との主張がされています。しかし、見落としてはいけないのは、この制度は、コスト効率よく排出量を削減していくための制度として導入されている点です。排出削減のためのコストが安い企業が積極的に排出量を削減し、排出削減が難しい企業に排出量を売ることによって、経済全体として排出量を削減するためのコストを最も小さくできるからです。

排出規制をどのように公平に設定するかなど、運用が難しい点はあります。しかし、EUのように先行して制度を導入していくことによって、政府は制度設計のための知見が蓄積されていきますし、企業としてもCO2排出量規制が設定される経済の中での経営にいち早く適応することができます。逆に言えば、EUからは、このように他国に先行した制度を導入することで、「新しい社会(低炭素社会)に向けたリーダーシップをとっていこう」、「企業に対してその道筋をしっかりと見せていこう」という強い意図が見えます。

21世紀において、世界的に大幅にCO2排出量を削減していく方向性はほぼ固まりつつあるといって間違いないでしょう。そのような方向性が定まりつつある今、その方向への「道筋」を素早く設定する必要があります。そうしなければ、日本国内の排出量を減らすことが難しいだけでなく、新しい社会に適応した経済制度の導入の遅れにつながりかねません。そして、排出削減が遅れれば遅れるほど、将来の削減量が大きくなり、今の若い世代や後の世代が、より多くの削減コストを負担しなければならなくなります

地球温暖化問題は、極めて重要な経済問題、そして世代間格差の問題でもあるのです。そして、温暖化対策のための制度は、同じく重要な経済政策であるのです。

(よういち)
by kyoto-yakusoku | 2007-05-29 17:43 | 海外の動向
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京都の約束プロジェクトは、地球温暖化を止めたい、そのための国内対策の制度をつくって欲しいというあなたの “ お願い ” を国会に届けるプロジェクトです。

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